地球深部探査船「ちきゅう」のライザー掘削システム

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地球深部探査船「ちきゅう」は、世界初のライザー掘削が可能な科学調査船で、マントルや巨大地震発生域への大深度掘削、地球の内部構造や過去の環境変動、生命の起源などの解明を目的とし、地質試料の回収・分析や、孔内観測装置の設置によるデータ解析などの研究のため活動しています。

地球深部探査船「ちきゅう」は、独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が所有・運営しています。

国際深海科学掘削計画(IODP)の主力船として、世界中の海底をライザー掘削システムにより、海底下7,000mまで掘削が可能で、X線CT装置や磁気シールド・ルームなど、最新の分析設備を搭載。

地球深部探査船「ちきゅう」が行った過去の研究は

南海トラフ地震発生帯の研究
「ちきゅう」は南海トラフ地震発生帯の掘削を行い、津波断層の特定に成功し、巨大地震発生のメカニズム解明に貢献。

遠州灘掘削
2020年に遠州灘での掘削を実施し、長期間の連続した地震記録試料を採取し、南海トラフ東端部の地震発生履歴の解明が進みました。

メタンハイドレートからの天然ガス産出
2013年には、世界で初めてメタンハイドレートからの天然ガス産出に成功し、新しいエネルギー資源の開発に向けた重要な材料となりました。

科学掘削の世界最深記録
2018年には、科学掘削の世界最深記録を更新し、海底下3,262.5mの掘削に成功。

地下生命圏の研究
高温、高圧、無酸素の環境下での地下生命圏の探索を行い、生命誕生の研究を進めています。


地球深部探査船「ちきゅう」による南海トラフ地震発生帯掘削計画は

掘削の概要と目的
南海トラフは、ユーラシアプレートとフィリピン海プレートが沈み込む場所で、歴史的に巨大地震と津波が繰り返し発生してきました。
地震調査研究推進本部は、今後30年以内に東南海地震が60〜70%、南海地震が50〜60%の確率で発生する可能性があるとしています。

南海トラフ地震発生帯掘削計画の主な目的
巨大地震の準備・発生過程の解明:プレート境界断層とその分岐断層を直接掘削し、地震の準備・発生過程を明らかにする。
地質構造の解明:付加体内部の地質構造を調査し、断層の活動の歴史を把握する。
防災への貢献:掘削データを基に、将来の地震災害に備えるための防災対策を強化する。

掘削の進展と成果
これまでに「ちきゅう」は南海トラフにおいて15地点で68孔を掘削し、総掘削長は約34kmに達していて、掘削によって回収された堆積物や堆積岩の分析により、地質構造の形成と断層の活動の歴史が明らかになりました。
316次研究航海では、断層近傍から直接試料を回収し、分岐断層の起源と歴史を解明することを目的とし、堆積物の年代決定や鉱物組成の分析により、断層活動の開始が195万年前まで遡ることが判明しました。

地球深部探査船「ちきゅう」による南海トラフ地震発生帯掘削計画は、巨大地震の発生メカニズムを解明し、将来の地震災害に備えるための重要なプロジェクトです。

さらなる地震メカニズムの解明と防災対策の強化、掘削によって得られる人類の未来に関わる重要な科学的知見を提供し、さまざまな分野への応用も期待されています。