太陽フレアが発生すると黒点の周囲に非常に明るい部分が現れます。
通常、水素ガスが放出するH𝛂(エイチアルファ)線という赤い光で観測されますが、特に明るいフレアは白色光でも観測でき、持続時間は短いもので数分、長いもので数時間続きます。
発生メカニズムと頻度
•太陽フレアは黒点の磁場が変化する際に、そのエネルギーが周囲のガスに伝わることで発生すると考えられています。
•黒点周期の極大期には大黒点や黒点群の近くで頻繁に発生し、極小期にはあまり発生しません。
放出されるエネルギーと粒子
•太陽フレアは太陽系で最大の爆発現象とされ、一度の大規模な爆発で全人類が使用する数十万年分の電力に相当するエネルギーを放出します。
•高温の爆発するガスから電波やX線、電子や陽子などの電気を帯びた素粒子が放出されます。
地球への影響
•X線や放出された粒子は地球に到達するまで最短で10分かかり、この粒子は地球の電離層や地磁気を乱し、電波通信の妨害(デリンジャー現象)、磁気嵐の発生、オーロラ活動の活発化のような影響を及ぼします。
太陽フレアが電波通信に与える影響や報告されている事例は
•電離層の乱れによる通信障害
太陽フレアによるX線や紫外線が地球の電離層に到達すると、電離層が異常に電離されます。
これにより、通常は反射される短波帯の電波が吸収されてしまい、通信が困難になります(デリンジャー現象)。
•航空機通信への影響
2001年4月には、太陽フレアの影響で、電離層が乱れて無線通信ができなくなり、飛行中の航空機と空港の間の通信が途絶える事例が発生しました。
•GPSの精度低下
太陽フレアによる電離層の異常は、GPS信号の伝播にも影響を与え、GPSの位置精度が低下することがあります。
•無線通信の長期障害
大規模な太陽フレア(スーパーフレア)の場合、最大で2週間程度、断続的に無線通信が使えなくなる可能性があると報告されています。
•電子機器の誤作動や故障
高エネルギー粒子が衛星の電子機器に直接衝突し、一時的な誤作動や永続的な故障を引き起こす可能性があります。
衛星の種類や軌道、太陽フレアの規模によって異なりますが、2022年2月にはスペースX社のスターリンク衛星49基のうち約8割の40基が、中規模の太陽フレアの影響で失われたと報告されています。
太陽活動は11年周期で活発化することが知られていて、次のピークは2025年頃と予測されています。
そのため、衛星運用者や宇宙機関は、太陽フレアの影響を最小限に抑えるための対策を講じる必要があります。
