WEFはネイチャーポジティブの重要性を強調しています

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ネイチャーポジティブとは、生物多様性や自然資本の損失に歯止めをかけ、将来的に回復軌道に乗せることを目指す取り組みを指します。

WEF(World Economic Forum)の試算によると、ネイチャーポジティブ経済への移行により、2030年までに年間最大10兆ドルのビジネスチャンスが創出され、3億9500万人の新規雇用が生まれる可能性があり、新たな事業領域拡大になるという見解です。

WEFの「グローバルリスク報告書」では、今後10年間の深刻なグローバルリスクのランキングに、生物多様性の喪失や、生態系の崩壊を4位にしていて、ネイチャーポジティブの重要性を強調しています。

日本での取り組みの「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」は、2024年3月に環境省、農林水産省、経済産業省、国土交通省の4省庁が連名で策定した戦略で、企業が自然資本を経営に組み込み、情報開示を通じて企業価値を向上させることを提案し、生物多様性の保全と経済成長の両立を目指す取り組みです。

環境省の試算によると、日本においてネイチャーポジティブ経済への移行により生まれる事業機会の規模は、2030年時点で約47兆円が見込まれています。

この戦略は、2022年12月のCOP15(生物多様性条約第15回締約国会議)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」や、2023年3月に閣議決定された「生物多様性国家戦略2023-2030」を踏まえて策定されました。

WEFのネイチャーポジティブ構想

ビジネスと自然の関係
企業活動は水や大気、動植物、鉱物といった自然資本がもたらす便益を用いて事業活動を行っているため、生物多様性の保全は企業の持続可能性に直結します。

具体的な取り組み例
•インドネシアでのスマート農業による作物収量の60%向上
•中国の蘇州工業園区でのグリーン開発によるGDP260倍増加
•ベトナムでのマングローブ回復による沿岸地域の人々の収入2倍以上増加

気候変動との関連
WEFは生物多様性と気候変動を表裏一体の問題として捉え、両者が地球のサステナビリティを左右する重要なファクターであると認識しています。

政策提言
WEFは「ポリシー・コンパニオン」を通じて、各国の財務省がネイチャーポジティブな経済を始動させる方法を提案しています。

WEFは、ネイチャーポジティブを単なる環境保護の取り組みではなく、新たな経済成長と雇用創出の機会として位置づけ、企業や政府に対してその重要性を訴えかけています。

経営戦略の変革
•全体的アプローチの必要性:企業は事業に影響を与え、依存する自然のすべての要素を考慮した全体的な目標を採用する必要があります。
バリューチェーン全体での協力:企業は自然にとっての成果を向上させるため、バリューチェーン全体で協力し、革新的なアプローチを開発することが求められます。
適応的管理の重要性:自然の複雑性を考慮し、企業はネイチャーポジティブな行動を適応的に管理し、効果に応じて拡大や修正を行う必要があります。

リスク管理の変化
•情報開示圧力の増加:気候変動対策と同様に、ステークホルダーからの情報開示圧力が高まることが予想されます。
投融資への影響:生物多様性への悪影響が大きい産業に対する投融資が控えられる可能性があります。

新たな経営指標の導入
•生物多様性や自然資本に関する定量的な指標が重要性を増し、企業の経営判断や投資家の評価基準として用いられる可能性が高まります。

消費者との関係性の変化
•企業は商品やサービスを通じて消費者とつながり、市場を変革する影響力を持っているので、ネイチャーポジティブの観点から、消費者の選好や購買行動に影響を与える可能性があります。

ネイチャーポジティブへの移行には、初期投資や体制の変更などが必要となる可能性がありますが、この戦略は、これらを長期的な経済成長と企業価値向上のための投資として位置づけられています。